●3 アトピーを治す体力とそれを阻むもの

サルトリイバラの花言葉は「不屈の精神」「元気になる」
サルトリイバラの花言葉は「不屈の精神」「元気になる」


■内股の弾力

私のご近所の方で四人目の男の子が六カ月くらいの時だったと思います。

表でお母さんにだっこされているときに出会い、立ち話をしながら見ていると以前見たときよりなんだか生気がない。

それでさりげなく「どお、S君いかがですか?」と声をかけたら

「ちょっと前にアトピーになったのである先生に相談したら

『魚とか卵その他何種類かの動物性蛋白を避けるように』と言われて、

実行したら出なくなったの。」と返事。


でもじっとその子の顔を見つめてみるとやっぱりどこか生気がなく、
肌色も失せていてなんだかくたーとしている。

「ねえ、ちょっと聞いてみるけど、

そういう食事にしてからなんだか元気ないんじゃない?」。

彼女は一瞬考えて「そういえばそうだわ、なんとなく元気がないわ。」

私はその子の内股に触ってみた。するとやっぱり弾力がない。


「ほら、内股がこんなだと赤ん坊にとっては栄養不良か、

欠乏の状態なのだから、そんなに制限しない方がいい。

赤ん坊には動物性蛋白がどうしても必要だからどんどん食べさせた方がいい」と言いました。

「それにアトピーでもそれ以外にちょっと重い病気を患ったり、

生命の危機的状況に陥ると一時的に皮膚の症状が収まることがあり、

それが回復するとアトピーが戻って来たという報告があるくらいなんだ。

ということは皮膚からの排泄に力を回せる栄養、体力があるからこそ

皮膚という排泄器官から排泄できるのだから、

とにかく栄養のあるもので好きなものは食べさせた方がいい。」と言ったのです。



それでその後しばらくして
また彼女がその子を連れているときに出会ったので聞いてみた。

「どうだった」

「うん、止めてたものを食べさせたら元気になって、

アトピーも出たけどそんなにひどくにならずにすんで、

今は二、三カ所出ているだけなの。」とのこと。

子供もなんだかにこにこしていて私もすごく嬉しかった。


■ 消えたアトピーが再び戻って来た

ところがその後、どれくらいしてだったか詳しく覚えていないのですが、

その子が公園で遊んでいて高いところから転げ落ちて
硬いところで後頭部をしこたま打った。

後頭部の打撲は死に至ることもあるというくらい打つときの速度が伴うと危ない。

入っていた仕事を済ませ、急いで行ってみると、

ちょっと危ないんじゃないかというぎりぎりの感じ、

とにかく母親と交替で一生懸命頭に気を集中して手を当てました。


鼻血の塊がでましたので、脳内の圧力が抜けたということで

それ自体は安心したが、逆に言うとそれくらい衝撃は強かったということになる。

医者にも連れていかないものですから、
家族の人にもちょっとうさんくさがられたのですが彼女が頑として聞かない。



別に医者に連れて行ってもいいのですが、そこでやれCTだ、

入院だと大騒ぎされて結局何ともなかった場合、

その大袈裟な印象が強烈に潜在意識化して、

やたら怪我をして困らせる子になる恐れが出てくる。

ましてやこの家は4人兄弟が親の気を引くためにしのぎを削っています。

これから先、皆で競争して怪我や病気をされたんでは全てが悪循環、

そのしわ寄せが行くのは大概母親と決まっている。

とにかく彼女は頑張った。必死で夜中も手を当てた。



ところで、ふと気づくとアトピーが消えている。

やはり体力を排泄に回せるからこそ皮膚に出る訳だ。

そのうち頭からびしゃびしゃと汗をかいた。

そしたらお腹の硬かったのが柔らいで来た。

そして打撲の問題が解消して来たら、おかしなことにアトピーが戻って来た。

しかしその後それは自然に消えて行った。


■ 汗の価値

このS君の場合、特にアトピーのための調整は施しませんでした。

今現在その子は六才で私の見る限りどこにもアトピーはありません。
(この原稿を書いたのは10年くらい前)

しかしまたいつか出てくる可能性もあるとは思います。

でもわたしはそれでいいと思っています。

新たな体力が出て来たとして対応するだけですから。


「不屈の精神」「元気になる」力は体の中にあると信じたい。



汗という皮膚からの排泄物には小便や大便からは出せない

体内の毒素が混ざっているそうです。時には重金属類などもだそうです。

(ただしこれは私が検出したデータではありません。
今までに読んだ本のどこかに書いてあったものです。)

この汗と言うのは大変研究の余地のあるものだと思います。

なぜかと言いますと生きている人間の自然現象の一つで、

決して試験官の中の出来事ではないからです。

誰かこのことに詳しい方がいらっしゃいましたらお教え願えれば幸いです。

また他の臨床例を読んでいただければイメージ出来ると思うのですが、

他の動物より人類は体毛が少なく皮膚から大量の汗をかけるようになったことと

感情の発達、アトピー、肺臓とは何らかの関連があるように思います。

それから腎臓、副腎もです。



ただこういう内臓の名前を出すと
すぐに過剰に病的問題として取り扱われるので、一言付け加えますと、

私はあくまでも病気、病因捜し、病気退治をしようとしているのではなくて、

 ●どうのようにその体に協力することが自然か、

 ●その体がもっている問題に対して、どうやって体が反発処理しようとしているのか

といったことに取り組んでみたいと思っているのが実のところなのです。

こういう方法で病気が改善する人が増えたら医療費も余るはずですし…。

それよりとにかく免疫力の高い健康な身体を維持したいですね。


■ アトピーの子供の環境問題

前述のS君話の場合、体力があるから排泄力もあるという体の生理的問題でした。

この原稿をS君のお母さんに見せましたら、その前の段階の話があるというのです。

実はこS君がアトピーになったとき、その家の人達に

「身内にはこんな子供は出来たことは無かった。

全くこんな弱い子を産んでどうするの!」と言われたのだそうです。

これは一つのいじめだと思うのです。


いじめというのは常に

『そのいじめる側が実は元はと言えば被害者であり、

それが解消していない』という原理があるはずなのですが、

同時にその殆どが無自覚になされてしまう、
という悲しい現象であることも確かです。

これはわたし自身が3人の子供を育てていて、
子供に対してついやってしまう事を掘り下げてみた実感としてよく分かります。


それで、「この子、可哀想にこんなになっちゃって」と回りに言われて

彼女は変に力が入ると同時に大変な責任感と圧迫感に襲われて

「何が、何が、‥‥何が悪いの」という気持ちが原因追求、

悪者排除の気持ちを加速させて、右往左往するうち

食べ物を制限することで得た結果を、

身内の人に返上することで、一安心したということだったのだそうです。


「あんなひどいことを言わないで『大変ね、でも大丈夫よ』と

言ってくれれば変に意識過剰で頑固にならずに済んだのに」とぼやいていました。


この問題は特にアトピーの問題として限定して考える問題ではないと思います。

母親がそういうことを言われ、焦りが強くなれば

子供が無意識にどういう反応を起こすかは歴然としているはずです。


いじめられる母親がそういう状況だと子供は萎縮するだろうし、
母親の顔色を見て、「お母さんを悲しませたくない」と

言う気持ちが自己犠牲的にさせ、表現力が喪失し、

感情エネルギーが内攻して何パーセントかは、

アトピーを促進させることになることも考えられる訳です。

こういう書き方もちょっと脅迫的な要素がないとは言えませんが、

子供の体にとって環境問題は重要です。


それからこの原稿を彼女に見せたら

「そういえば私、あの子がアトピーだったなんて、

ケロッと忘れていたわ。」と言っていました。